目次
不妊治療を受ける女性の心境
女性の高学歴化・社会進出に伴い晩婚化がすすみ、子どもがほしいと希望する年齢が高くなっています。
そこに、生殖医療の発展と普及したことで、不妊治療は一般化しました。
子どもがほしいと思っている夫婦にとって、子どもがなかなかできない事実はつらいものでしょう。
女性はことさらです。
子どもを可愛がっている見知らぬ母親に嫉妬を覚えるかもしれません。
でも、そんな安易に想像できる一面ばかりではないのです。
今回は、不妊症治療を受けている方へのアンケートから見えた、心の奥を少しご紹介します。
不妊治療を受けている病院に子連れの母親や妊婦と同じ待合室はいやですか?
不妊治療を受ける女性と、妊娠、出産を経た女性が同じ部屋に居る。産婦人科の待合室はそういう場所です。
それだけを聞くと、不妊治療を受けている女性からしたら「欲しいものが目の前にある」状態はつらいのでは?と想像してしまいますよね。
でも現実はちょっと違います。
この質問に「いやだ」と答える人ばかりではないのです。
不妊治療を受けたことない人は「いやだ」って答えるだろう、とほとんどの方が思うでしょう。
でも、逆に不妊治療を受けている人や受けたことのある人は「いやじゃない」と答える人も多いのです。
対象者の抽出にもよりますが、あるクリニックでは「いやじゃない」人の方が過半数を超えました。
「子どもを見ていると不妊治療をしてもほしいという気持ちが再確認できる」
「自分のお腹にも赤ちゃんがきてくれる、と前向きな想像ができる」
「不妊治療の末、授かった経験談をクリニック交流会などで聞ける」
絶望が続き、自分とは関係ない人にも嫉妬を抱くなど、黒く渦巻くネガティブな感情が沸かないとはいいません。
でも、それだけではないのです。
不妊治療に夫婦で協力していますか?
不妊治療は原因によって治療方針が左右されます。
原因不明を除き、男性原因対女性原因では4:6の割合です。
昔から「石女うばずめ」という言葉があるように不妊原因は女性がすべてだと思われがちです。
しかし、実際はそうではありません。
産婦人科に男性である夫が受診することに抵抗があるのかもしれません。
体裁やプライドにも女性よりこだわってしまうのかもしれません。
子どもを授かることは女性だけでできることではありません。
まずは夫婦で受診することが不妊治療の第一歩なのです。
「最初は協力的でなかった夫も協力してくれるようになった」
「ホルモン治療で体調がすぐれない時に家事をすべてやってくれる」
「お互いを思いやれるようになって夫婦の絆が深まった」
こういったお話を聞くと不妊治療は辛いことばかりではないんだなと思います。
もちろん、辛いこともたくさんあって、それを乗り越えたからこそ得るものがあったんだと思います。
妊娠・出産後の気持ちも単純に嬉しいだけではないのです。
妊娠・出産した後の気持ちは?
「ただただ嬉しい気持ちでいっぱい。達成感が得られた。出産については心配」
「妊娠したものの体外受精した子という目でみられないか心配になってきた」
「これだけ私が頑張ってできた子なのに、他の子よりも育ちが遅いことが気に入らない」
不妊治療を乗り越え妊娠が成立すると、みんな喜びに満ちあふれます。
そこから、出産までは他の自然妊娠の妊婦さんと一緒で、はじめてのお産は不安がいっぱいです。
でも、不妊治療を受けていた女性は市や民間の子育て支援になかなか足を運べません。
体外受精でできた子ということがバレてしまわないか、差別をうけないか、と周りの目が気になってしまうというのです。
子どもが自然に授からなかったというコンプレックスは妊娠後も影を落とすのです。
そんな疎外感を抱く場合もあれば、自分は特別なんだ、と区別してほしい希望を持つ女性もいます。
これだけ辛い不妊治療を乗り越えたんだから、もっと病院、さらに行政は他の自然妊娠の妊婦とは区別して扱って欲しいと思うのです。
妊婦健診の受診の区別や優先、行政からの補助などを別途手厚くしてもらいたいと思っています。
出産後にコンプレックスが続く方も
さらに、出産後もそれは続きます。
今は30人~40人に1人は体外受精で授かった子どもという統計があります。
クラスに1人の割合です。
母親は自分の子と他の子を比べてしまいがちです。
統計的に体外受精で授かった子どもは発達遅延があることが多いですが、子どもひとり1人の育ちはさまざまです。
ある時期の成長だけに目を向けて比べあっても仕方ありません。
それでも、不妊治療の末、やっと授かった特別な子どもを周りが特別扱いしてくれないこと、その子どもが特別に優秀でないことを受け入れられない人もいるのです。
もちろん、ただただ生を受けてくれたことに感謝する母親もいます。
出産後、夫の協力は得られていますか?
夫婦ともに不妊治療に向き合い、乗り越えてきた夫婦だからその後の生活もきっと協力し合えているだろうな、と思いますよね。
そのままよい関係を作っている夫婦もおられると思います。
しかし、子どもを授かったことがゴールになってしまう夫婦もいます。
「子どもができるまでは夫は仕事の調整をして一緒に過ごす時間を作ってくれていたのに、子どもが生まれたら、子育てを任せっきりにするようになった」
「子どもができないのは自分(夫)のせいだったから頑張ったが、できたんだから家を守るのは妻の役目だ、と言われた」
「育ちの遅い子どもに対して、自然に授かった子じゃないから仕方ないと卑下された」
世の中、イクメンという言葉がはびこり、子育てをする男性が増えてきたようにも感じます。
しかし、やはり家事・育児は妻の役目と思っている男性も多いのです。
ことに不妊治療を終え、子どもが授かった達成感で、その後の生活に目を向けることのできないことがあります。
子どもを授かってからこそ家族が増え、共に築き上げていくことが多いことに早く気づいてもらいたいものです。
自然妊娠した女性と不妊治療で妊娠した女性、どちらも同じ悩みもあり、違った悩みもあり、それぞれ母親は悩みながら戦っています。
どちらかだと、こう思うだろう、という先入観や偏見は心を閉ざします。
いろんな悩みを共有し、交流し、一人で溜め込まないのが一番ですね。
まずはパートナー、家族、友人に心を開いてみましょう。違った捉え方があるかもしれません。
そして、そこからまたまた新しい関係が広がっていくことでしょう。
by shibaiku
記事公開日 2017/05/08
最終更新日 2017/05/09