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体の悩み

10キロの子宮筋腫を手術で取った彼女の話

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女性にとって子宮は身体の中でも特別な臓器の1つだと思います。

でも、「女性」になる前に病気になってしまったら、それは特別だと思えないのかもしれません。

今回は、私が仕事で出会った1人の女性の子宮筋腫についてお話します。

子宮筋腫は早期発見すると命にかかわるような病気ではありません。
でも、サインを見過ごすと取り返しがつかなくなるのです。

21歳のその女性は子宮筋腫の重さが10キロになっていました。
単純に考えて体重が10キロ増えるんだから、気づくだろうと思うかもしれません。
でも、彼女の筋腫は急激に大きくなったわけではないのです。

子宮筋腫になるまで(幼少期〜思春期)

学校の風景

彼女は母子家庭でした。母親はネグレクトで、小学校の頃からほとんど学校へも通わせてもらえなかったそうです。

それだけではなく、小学校までほとんど外にも出たことがなかったのです。

母親から”育ててもらえない”小学生時代

小学校に入ってからすぐに「くさい」、「きたない」とクラスメイトに言われたことがきっかけで学校へ行くことが怖くなりました。

母親は食事や洋服をたまに買ってきてはまたどこかへ出て行きました。

監禁されていたわけではなく、どうしてもお腹がすく時にはこっそり小学校の保健室に行って給食を食べていました。

保健室の先生は優しく、身体を拭いたりもしてくれました。

学校の先生だけではなく、役所の人でしょうか。知らない大人の人が家に来て、どこかへ行く話をしていましたが、母親は結局応じず、状態は変わりませんでした。

思春期、そして初潮

思春期の学生

13歳になったころ初潮を迎えました。中学生になってもほとんど学校には通っていません。母親にはとても嫌そうな顔をして、生理用品を渡されたことをよく覚えてるそうです。そういった心理状態もあってか、生理は不順でした。

彼女はあまり食事をしていないわりに、自分は太っていると感じていました。

それは自分がひきこもりで、身体を動かすことがないからだとも。

母親とはほとんど顔を合わすこともなく話をすることもありません。
また、友達も居ないため、自分と他人を比べることができない状況だったのです。

かろうじて家にテレビはあったので、テレビの中のモデルや女優さんと自分はなんて違うんだろう、と恥ずかしい気持ちでいっぱいで、さらに家の外に出たいという気持ちはなくなったのです。

一般社会の「女性」を知らないがゆえのコンプレックス

女学生

初めて同級生にかけられた言葉が「くさい」、「きたない」です。

彼女は自分自身にとてもコンプレックスを抱いていました。

学校に行けば、いろんな容姿の子がいるものです。ですが、彼女はそれを知らなかった。

テレビの中が標準になっていました。

子宮筋腫発覚、手術へ

20歳頃になると、母親は物を買ってくることもしなくなり、たまにお金だけを置いていくようになりました。

そうなると、彼女は買い物に出なければなりません。

みんなの目がとても怖くて、買い物が終わるとすぐに家へ帰る生活を繰り返していました。
成人女性の正常な食事量も知りません。

異常な体型に気づけない環境

割れた鏡

1日の食事はパン1枚ということもありましたが、手足はやせほそっているのにウエストのくびれのない体型に、異常を感じることもなく、ただ太っていると思っていました。

食欲もありません。幼い頃に感じたひもじい思いはなく、食事をすると気持ちが悪くなることが多くなっていました。

やっと辿り着いた手術

21歳のある日、嘔吐が続き、お腹に激痛が走り、意識を失いました。
気がつくと病院でした。

医師からの説明は全く理解できませんでした。

CTを見る医者

CT画像を見せられると、身体の前面の胴部分が真っ白なのです。

正常な位置でいえば、胃の部分から膀胱部分までがすべて筋腫で膨れ上がった子宮が占めていたのです。他の臓器は上下と背中側に押されきっています。

医師は徐々に時間をかけて大きくなって圧迫していったにしても、症状に気づかなかったのかと本人と母親に尋ねました。

月経もなく、頻尿にもなり、食欲不振、痛みなどかなりの症状があったはずです。でも、彼女は正常を知らないのです。変調に気づけるはずがありません。

もちろん、彼女のことを省みることもしなかった母親が知るはずもなく無言です。

子宮全摘出の手術となりました。

筋腫は10キロありました。
不自然な体型であったに違いないですが、体重をみると45キロと成人女性で一般的といえます。

でも、逆にいえば、筋腫をとった後の彼女は35キロもなかったのです。

他の臓器への癒着もみられ、今後、どこまで正常に機能するかは分からないとのことでした。

子宮筋腫を手術で摘出した後の彼女

入院患者

一番印象だったのが、子宮をとることになっても彼女は状況を理解していないのか、きょとんとした表情をしていました。

もう一生子どもを産むことができない身体になってしまったことにショックを受けるほど彼女は「女性」として成長していなかったのです。

自分にも、誰からにも気づかれないという危うさ

彼女は生まれ持って身体が丈夫であることが逆に災いして、今まで病院へ運び込まれることがありませんでした。

暴力的な虐待も受けていません。そういった場合に行政はなかなか家庭に踏み込めないのが現状です。

でも、その結果、彼女は身体の一部を失いました。

枯れた花

人は他人に認められることで自信がつきます。
まずは母親に、父親に、家族に、認められることが生まれて最初の自信になります。

その一歩を失ってしまうと、土台がないため、なかなか次へと積み重ねることができません。

彼女は今回のことで、医師が相談所に届け出、ケアを受けられるようになりました。

彼女が「女性」へと心も成長した時に、もう子宮がなく、子どもが産めないことをどう受け止めるだろう、と思った時、なんとも言えない気持ちになります。

彼女が新たなコンプレックスにとりつかれるのではなく、今回のことで人として一歩を踏み出せたと前向きに感じてもらいたいと願っています。

あなたが気づくことで何かが変わるかもしれない

花に気づいた女性

もし、彼女が小学校の時に友達を作れていたら。
もし、テレビ以外の世界にも目を向けることができていたら。
そんなことを考えたらきりがありません。

今回、彼女は誰からも気づかれることなく子宮筋腫になり、全摘出ということになりました。
自分で「何か変だな」と思ったり、誰か身近な人が「いつもとちょっと違うな」と思ったりすることはありませんか?
皆さんもそれを「気づいて」あげることで、自分や、誰かの何かが変わるかもしれません。

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