人前に出ることが苦手な私
昔から、人前に出て何かをすることが大の苦手でした。
その一番古い記憶が、幼稚園のおゆうぎ会です。
私は常に脇役でした。
それでも舞台に上がって演技をするのが苦痛で、前日の夜は眠れませんでした。
その後、小・中学校では授業中に手を上げることが苦手でした。
「この問題分かる人、手をあげて」と、先生は言います。
回答者は挙手をした生徒の中から指名されます。
特に中学校においては、授業中の積極的な挙手は内申点に関わります。
頭の中では理解していても、手はあげられませんでした。
みんなの前で回答するなんて、到底できるはずもありません。
想像しただけでも緊張して震えてくるほどでした。
また音楽の時間の歌唱テストも苦痛でした。
声が小さいとやはり評価に関わってきます。
でも、みんなの前に出て一人で歌を歌うなんて……。
無情にも順番はやってきます。
前の席に座っていた人には、私の足の震えは丸分かりだったと思います。
こんな風に、人前に出ると例外なくあがってしまうのです。
どうにかしたいとずっと悩んできました。
どうにかしたい!私が試した対処法
ジャガイモ対処法
定番ですが「人」という字を手に書いて飲み込んでみたりしました。
周囲の観衆を「みんなただのジャガイモ!」と思い込んでみたりもしました。
出番の直前まで「今日の夕飯、何かなあ」と違うことを考えてみたりもしました。
しかしどれも効果がありません。
やはり頭の片隅では現実が分かっているのです。
「次は自分の番!もうすぐ自分の番!」と、緊張は募っていきました。
だからどんな方法を試してもまったく無意味でした。
本気でどうにかしたい!
変わらなきゃ!と決意した大きなきっかけは、就職活動でした。
グループ面接のある企業を受けることが多々ありました。
4~5人いる受験者の中に私も混ざります。
面接官に指定された質問を順番に回答していかなければいけません。
「前の人は何と言うのだろう、きっと素晴らしい回答だろうな。次は私の番だ、何て言おう。ヘタなことは言いたくない、緊張して詰まったらそれだけで面接を落とされる……」
頭の中が真っ白になり、いざ自分の番になった時は言葉が出てきませんでした。
まずい、何か良いことを言わなきゃ……。
面接官の印象を良くするようなことを言わなきゃ……。
ようやく出てきた言葉は、「すみません、わかりません」でした。
そこから先は何の質問をされたのかさえ覚えていません。
このままではどの企業にも受からない、と思いました。
極度のあがり症の自分自身を変えていかなければなりません。
それからはいろいろ試行錯誤しました。
その中で、たまたま見ていたテレビにヒントがありました。
女優さんが「今回の映画で苦労したこと」について語る、という番組。
女優さんはその質問に対して「役作りに苦労しました。やはり自分と正反対の役なので、その役になりきることがなかなか難しかったです」
私はハッとしました。
そうだ、女優になりきればいいんだ。
「常に堂々としている私」を演じるのです。
それなら、どんな場面でもあがらずに対応できる!そう確信しました。
企業の面接を受ける時は、「私、堂々としています。そういう性格です」と言わんばかりにどっしりと構えていました。
勿論心の中ではドキドキが止まりません。
でも「私は女優。物怖じしない自分を演じられる。大丈夫」と自分に何度も言い聞かせました。
結果、3社の面接を受けて2社が2次選考への合格通知を出してくれました。
それまでは10社受けて10社まるまる不合格だったのに。
これはどんどん私の自信になっていきました。
緊張するような場面ではいつも自己暗示をするようになりました。
「私は女優。私は堂々とした人間」
そのように自分に言い聞かせることを習慣付けていきました。
思いこみが本物に
この方法のおかげで、私は希望の会社に就職することができました。
今も、仕事で人前に立つことはあります。
大きな声で多数の人に話をしなければいけない場面も。
どれも以前の自分なら「あの……あの……」とどもってしまい、できなかったことです。
今は胸を張ってできます。
就職前だったら「私は女優……私は女優……」と呪文のように心の中で唱えていました。
けれど、それが習慣化された今、「堂々としている自分」が板についてきました。
素で、緊張しなくなったのです。
女優になりきって自分を鼓舞すれば、思いこみだって本物にできました。
あがり症に悩んでいる方は、ぜひ1度やってみてほしいと思います。
by 松田久子
記事公開日 2017/06/12
最終更新日 2017/06/14